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マンションは何年持つのか?その2 〜時限爆弾の導火線は抜くことができるのか?

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     耐用年数の違いは当然建て替えにも影響を及ぼす。ここで欧米各国の建て替えについての法律を見てみよう。
    ■ドイツ
    「大規模損傷を受けた場合、全員の合意のみで修繕・復旧が可能」
    ■フランス
    「老朽化による建て替えは全員一致」
    ■アメリカ 統一コンドミニアム法
    「80%の決議で区分所有関係が終了」
    ●日本
    1983年中曽根政権下で全員一致から「五分の四以上の賛成」へ転換。この法案成立時に都市開発を進める森ビル社長が参考人として法制審会議に出席し、都市再生と建て替えを訴え、再開発ラッシュの口火を切った。そして再開発により通常の倍の容積率を獲得し、開発利益が転がり込んでいるという背景がそこにはある。
                         (参考文献 *1)

     古い共同住宅は、建て替え時に今までの面積より大きな建物を建設し、その余剰分の販売によって建設費をまかなう再開発のやり方が常套手段だった。例えば代官山アドレスの超高層マンションも、もともとあった低層の同潤会アパートの敷地に再開発によって建てられたものであり、昔から住んでいた住民はその居住権をそのまま新しいマンションでも持つこととなった。こうした再開発の余地のある古いマンションを買い、再開発終了後に高値で売りさばくブローカーもいるらしい。しかしこのやり方は容積率に余裕がある場合にのみ成立するのだが、現在の新しいマンションのほとんどは、建築基準法の容積率いっぱいまでに緩和規定まで使って建てられているので、こうしたオイシイ再開発の手法は使えず、建て替えするとなればその費用はそのまま住民が負担することになる。そうした時期には住民もかなり高齢化していて負担は重くのしかかるばかりか、もし4/5以上の決議で建て替えが決まってしまったならば、行く場所がなく路頭に迷ってしまう可能性もある。
     実際に私が関わっているマンションでもスロープを付けるつけないといった議論でさえ住民の合意形成に10年近く費やしており、建て替えなどの大きな金額がかかるものとなるとさらに合意形成は難しく、無事に建て替えに至るケースはかなり少ないという。こうした状況でディベロッパーや販売会社は売り切ることによってその後はノータッチ、おいしいところを持って行ってあとはどうなっても知らんぷりなのだ。それでも仕方ないから、これしかないから人々はマンションを買うが、これが本当にいいやりかたではないはずだ。
     土地所有や住宅所有の考え方や運営方式、都市居住のあり方を再構築するにはあまりにも複雑な問題が絡みすぎている。建て替えをせずに10年−20年程度なら先延ばし先延ばしでいけるのかもしれない。しかし合意形成ができずに建て替えもできない状況においては、転売もできずに次第に住民が出て行ってしまうだろう。こうなるとあとは住民が死ぬのを待つか、廃墟になるのを黙ってみているかという状況になりかねない。特に800戸以上あるような超高層マンションにおいては合意形成ができないような状況は大いにあり得るので、今の高層マンションブームは一転、同時期に大きな社会問題になってしまう可能性を潜めている。

     容積率を緩和して再開発するやり方は麻薬的だ。行政が地図上で容積率数字さえ増やせば、地主もディベロッパーも収益が増えるので大喜びだ。得をする人はいても個人的に損をする人はいないことが余計にその麻薬性を増大させる。しかし、そうして高層化することが本当に都市にとって最適解なのか?人が生活するのにふさわしい場所なのか?そうした議論は置き去りのまま、数字の操作だけで話は進んでいく。おそらく今後もそうした政策で問題を先送りする可能性は大いにある。しかし、再開発の上に再開発をすれば、また都心の人口は増え、周辺の空室率は増加し、数々の違った問題が表出してくる。超高層に住む人の割合が増えればそこで子を育て、生活する人々への影響も大きな問題となってくるだろう。真偽についてはわからないし個人差もかなりあると思うが、そうした影響がもし本当に出始めているのならば、ディベロッパーはそうした事後調査を行い情報を公開するべきだし、住民も納得した上で購入していくべきだろう。
      ■参考HP (真偽はご自身で判断ください)
      驚愕データ! マンション住人は寿命が9年短い

     ここで批判をするだけではなく、現在の私の考えを最後に提示してみよう。
     ひとつは基本的に土地は個人の持ち物ではあっても国民の共有財産として地域の利益のために利用していくことが自然であり、ここまで投機の対象として利用されている状況は海外から見れば異常事態だという。特に国が国有地を切り売りしている状況は理解に苦しむ。国が一時しのぎの財政のために財産を切り売りするのが本当にベストの解答だとはとても思えない。長い目で見れば、国が運用していくという視点が必要ではないだろうか?話はそれたが地域がその中にある土地を有効に利用していく視点は、行政からの押しつけでは成立しないし、そこに住む人々が街を作るという視点が必要になってくる。イギリスのリースホールドが日本のような区分所有に近いコモンホールドに切り替わりつつあるというが、これに関しては日本は逆行してリースホールどという視点が必要なのではないかと思っている。

     そして、建て替え問題に関してはアメリカコンドミニアム法にあるような「80%の決議で区分所有関係が終了」という考え方がすっきりしていていいと思う。区分所有関係を解消し、土地や建物を売却しその売却益を分割配分することで、また新しくその土地にマンションをたてるのならばそこに戻るもよし、他に移るもよし、とすれば余計な問題を抱えることなく話を進められるはずだ。戸建てならまだしも、マンション購入=終身居住的な意識を持つことにそもそも無理があるのだ。RC造の場合47年の建物の減価償却期間が済んでしまえば、資産価値はなくなってしまうというのもおかしいが、建物がほとんど資産とならない状況で、さらに高層になればなるほど一世帯あたりの区分所有土地面積は小さくなるので、たとえ土地も含めて売却したとしても金額はしれている。やはり区分所有=資産所有とみるのはどう考えても無理がある。これがマンションにおけるひとつの幻想だと思うのだ。区分所有権とはいっても、状況を考えるとあくまで居住権の売買と考えた方が納得いくはずだ。それならディベロッパーは土地を所有したままのリースホールドにすればいいのだが、彼らはそれをしない。面倒なことをせずに売り切ってしまった方がうまみがあるのだ。

     もうひとつは基本的な生活の場所を確保するために、公的資金を使ってでも公営住宅をもっと充実させるべきであり、しかも今までのような通常のマンションタイプに加え、個室を持ちつつLDKを共有するシェアタイプを導入していき、ここには若者だけではなく、単身の老人も優先的に入居できるようにする新しいタイプの集合住宅の可能性もあると思っている。こうした住宅の運営管理にはNPOなどが担い、公共と言うよりも半公共的な立場で運営していくべきである。参考文献にも上げたが、『あなたのマンションが廃墟になる日 建て替えにひそむ危険な落とし穴』でもいくつかの事例が紹介されている。興味のある方はご一読を。

     最後にあげておきたいのは大家族の復権だ。家族だけでなく、新しい集住の形といってもいいかもしれない。これはまた面白いテーマなので、また次回以降にまとめて書く予定だがこれもまた住宅事情に大きく関わってくる。

     問題は複雑に絡み合っており、私自身まだまだ不勉強で今後の展開や方向性に対する意見がまとまってはいない。しかしノマドではなく定住する以上、住宅問題から逃げることはできない。施主のために建築を作るのも建築家のひとつの役割だが、住むためのシステムをないがしろにしてこれを行うのは本末転倒だと思っている。建築家にはどうしようもないと逃げてしまうのは簡単だ。しかし、『Voice of Design』(*2)という言葉があるように、目指すべき方向性について声を発することが個々のデザインよりも先にするべき重要なデザインであると思っている。

      ■参考文献
      *1『あなたのマンションが廃墟になる日 建て替えにひそむ危険な落とし穴』 
      山岡淳一郎 草思社
      *2 日本デザイン機構が発行する機関誌の名称
      『Newsweek 日本版 特集:住めば住むほど得する住宅』2007.03.14号 
      阪急コミュニケーション


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    この記事に対するコメント

    マンションが健康に悪いという事例(真偽は不明)を見て、危機感をあおるつもりもないのだが、今医学的な事をいろいろ調べていても、どうも素材としてのコンクリートというのが実は身体にとってよいものではないという話がよく出てくる。私自身RC造のマンションに住んでいるので、なんとも言いようがないが、今後いろいろな研究成果が出てくると共に住居についての建築家の設計手法も変わってくると思っている。そうなると今の都市のあり方も全く違ったものになる予感もある。
     
     確かに政治的な制度の話になると無力感を感じざるを得ない。それは政治や法律に対する諦めなのかもしれないが、ここで考えたビジョンが実現する可能性がないわけではない。すこしでも多くの人が興味を持ち、意見を言うことによって実現に向かう第一歩を踏み出すことになると思っている。
    管理人 | 2007/07/28 11:46 AM
    何度も読んじゃったよ〜。
    怖いね。なんか怖さを感じずにはいられなかった。
    先日高層マンションから見る花火は最高だろうな、住んでみたいな〜なんて羨ましがったアタシ・・・。
     驚愕データ! マンション住人は寿命が9年短い
    読んでビックリ。ヤバイじゃん。

    人生の大きな買い物を既にしてしまった我が家。
    一軒屋じゃなくマンション!と言った自分が恨めしい。
    もっと早く知っておきたかった・・・ただの勉強不足だね・・。
    救いは5階に住んでるって事だけわ(笑)
    ヒロヨ | 2007/07/26 12:51 AM
    最終的に、制度として、政治の話になっていきそうになったとき、なにか”無力感”みたいなのを感じずにはいられないのは、どうしたもんか。。。

    コンクリートの寿命から考えて、見慣れたビルやアパートなんかは、「立て替えの時期なんだな〜」とは漠然と感じていたけど、今ニョキニョキと建っている高層マンションの100年後とか、自分のこれからの住環境のことを考えると、”無力”とか言ってられないね。


    ちょっと勉強してみます。
    サワイ | 2007/07/25 11:41 PM
    地元で家探しをはじめたら
    東急沿線は住みやすいけど価格が高すぎる(><)

    こういった街づくりを東急みたいに儲けを見込んでではなく
    国が行って、もう少し現実的な価格で
    家が買えるようにならないかなぁ。。。

    今からローン組んで、年金生活になっても
    ローンが残ってたら…。
    食べていけないよぉ(涙)
    ママ | 2007/07/25 12:44 AM
    お願いだから、とにかく、地震に強い建物に。
    地震は絶対くるから。
    どうか、お願いします。
    きねのん | 2007/07/24 10:35 PM
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