言葉にする事の難しさ 〜特許申請を通して
日本は特許申請がかなり多い国なのだが、申請数に対する弁理士の数はまだまだ足りていないようだ。弁理士数 5,228名 (平成15年7月22日現在)にたいして、特許申請数は41万件(平成15年)。今弁理士になれば、仕事に困る事はないらしい。それゆえ価格もまだ競争にさらされていないので高いと思われる。
最初は申請のやり方を説明した本を読んで勉強していた。この本のキャッチフレーズは「えんぴつ1本3時間でできる特許申請」しかし、3時間でこの本は読めても申請書を書けるだけの内容が入っているとは思えず、発明協会の無料相談に行ってみた。こうした無料相談は特許庁や弁理士会でも行われており、これから自分で特許申請する人にはかなり重宝する。相談員のおじさんにこの本を見せたのだが、「これじゃ書けるようにはならないよ〜」と一蹴。今は彼がオススメしてくれた、発明協会が発行している教科書を愛読している。
実はこの無料相談に行ったのは昨日が3回目。初回は弁理士会、2回目は発明協会。弁理士会の方には相談員が数人いて、毎日交代で相談に応じているのだが、発明協会は基本的に一人の相談員が対応する。弁理士会ではいろいろな人に見てもらえる利点もあるのだが、毎回最初から説明しなくてはならず、まだ内容以前の問題なので、発明協会の優しいおじさん一人にしばらく面倒を見てもらう事にした。このおじさん、最初はやる気あるのかな??と思っていたのだが、こっちにやる気があるのが分かると、時間をオーバーしてまで面倒見てくれている。対応は優しいが、言う事は厳しい。。無事に終わった際には菓子折でも持って行かねばなるまい(^^)
実はこの特許申請を最初はかなり甘く見ていた。春に申請書類をもらって、1ヶ月もあれば書けると思っていたのだが、さすがに素人にはできず、仕事の合間をぬいながらとうとう3ヶ月以上たってしまった。
まずは自分の特許の性質をきちんと把握するところから始まるのだが、今回申請しようと思っているものは、当初特許には該当せずに実用新案などになるのではないかと思っていた。しかし、初回の相談員の方は、「特許でいった方がいい」というアドバイスをしてくれたので、特許に切り替えたのだが、これがまた自分でも「発明といえるのか??」と思うほど要素が少なくシンプルなものなので、その説明にも四苦八苦。もともと言葉足らずな性格で、今までの建築やデザインの仕事ではいかに言葉を使わずにビジュアルで表現するかを念頭にやってきたので、すべてを言葉で表現するという壁の高さを認識せざるをえない状況にいる。
建築には建築基準法があり、法律の回りくどい説明や、言い訳のような特例の数々にに飽き飽きしていたのだが、感覚的には分かっている共通認識を言葉で厳密に表現することが、こんなにも難しい事なのかと思っていた。そして、そのことが性に合わないと思っていただけに、またしてもその思いがここで出てきて試練の登場といった感じだ(笑)。
しかし、ピンチはチャンス。これを機に言葉で丁寧に説明する大切さを学びたいと思う。自分で長い間関わっているものを、何も知らない人に説明する事は本当に難しい。取扱説明書をつくる事の難しさはよく言われるが、それと同じように一度素人の目に戻り、自分のやっている事をもう一度、いちから理解するのは決して無駄な事ではない。
今回の場合も再度いちから理解し直す事により、新たなアイディアも出てきているし、これから企業にプレゼンテーションしていく上でも、アイディアのポイントや概念を簡潔に説明できるようになると思う。
申請書類の提出まで、もう少し時間がかかりそうだが、知的財産関連の流れを見る事ができ、その権利化まで出来れば言う事はない。相変わらずの回り道だが、「無駄なものは何もない」といういつものスタンスで、次への展開に結びつけていきたい。
この記事に対するコメント
回り道してると 結びつけなくても自然とおもしろい展開が待ってるよー
しかし、そんな厳しい突っ込みに耐えられる明細が、これだけ四苦八苦している状態で書けるのだろうか・・・意気込みだけは負けないのだが(笑)
しっかし、あの特許明細って、いつみても吐き気がします。。
が、それと同時に、実際のものを見せないで、言葉だけで、物体の形、特徴、その発明品がなにをするのか、など、こと細かに説明する、あの文章は、ある意味、芸術でもあるな、と思いました。
弁理士さんと食事にいったときに、素人の私に、特許の文章のなんたるか、を説明するために、割り箸を例にとって、もしこれを特許申請するとしたら、どんな明細が出来上がるか、と、文章をいくつか作ってくれましたが、こんななんてことない、言ってしまえば棒きれ二本を説明するのに、こんなに文章ができるんだ、と感心。
で、もうひとつ感心した、ことは、特許庁の審査員の物事ののみこみかたの早いこと。なぜ、この発明がすぐれてるか、ってのをちょっとの説明で、ほかの特許との違いをすぐに理解。だから、こっちの痛いところも、がんがんとついてくる。
そして、自分の特許に自信がある発明者。なにより自分の発明に対する、愛、みたいなのが感じられる。いろんな特許を見て、対策をたてつつ、ほかの特許に抵触しないよう、こまかい網目をくぐって、そこからさらに何かを作り出す、創造性。
貴重な経験でしたわ。
私の場合、特許申請の中のほんの一部についてしかお手伝いしなかったのに、こんなに得るものがあったのだから、全てのプロセスにかかわるじゅんぺいさんにおいては。。。もう、新しい何かもうひとつ、大きなブレークスルーがあるかもしれませんね!